▪️その不動産の歴史も読み取れる
▪️権利関係を見る
▪️プロは知ってる共同担保目録
▪️値下げできそうか?の判断
▪️注意事項
■その不動産の歴史も読み取れる
登記簿謄本は不動産をもっていたら一度は見たことがあると思います。住所と名前が書いてあり、誰がその物件の所有者かというのがわかります。他にも、どこからいくら借りているかなどもわかります。
そもそも登記簿謄本はその不動産の権利関係を記載しているものです。なので登記簿謄本を読めばどんな土地だったのかなどもわかります。
主に誰が所有しているかが記載されている甲区を見るときに登記簿謄本と合わせてGoogleさんで調べると、かつてここを所有していたのは地元の名士だった、大企業の創業家だったなどがわかることがあります。なぜ売ることになったのかがわかることもあります。また「〇〇が生まれた場所」などの謄本をあげてみるのもすごく面白いです。
そうしたことを考えると土地には歴史が刻まれていて、その歴史を謄本で読み取れるようになると不動産業がまた一つ楽しくなります。
■権利関係を見る
甲区といわれる箇所には権利をもっているが誰かかというのがわかります。
乙区といわれる場所には所有権以外の権利関係のことが書いてあります。抵当権や差し押さえといったものです。ここでも面白いことがわかります。
一般的には金融機関から借り入れすると書かれ、●●銀行から所有者さんがどれくらいの金額を借りているかがわかります。ここでは銀行以外の個人名や金融機関ではない会社名が記載されていることもあります。
個人名(仮にAさんとしましょう)が記載されているときは、この物件を担保にAさんからお金を借りているということです。個人間で担保を差し出さないといけないようなことがあったのか、それとも親族なのかなどいろいろ想像できます。その名前をGoogleさんで調べてみるとお金を貸しているのが有名人だったりということもあります。なかには反社会勢力の方や企業舎弟的な会社だったりすることも……。
ここでは所有者の交友関係も想像できるわけです。ある程度の人物像が想像できるのでここも面白いところです。私の経験では大臣経験者がお金を貸していたことがありました。大臣からお金を借りられるほどの交友関係、信頼関係にびっくりしました。この話を所有者の方に確認したら、かつて大変だった時期があってそれを助けてくれたのが大臣だったと仰っていました。
■プロは知ってる共同担保目録
共同担保目録はご存知でしょうか?
抵当権を付ける際に担保評価がたりなかったり土地と建物が一体のなどの場合、一緒に担保にするものの目録です。住宅を買うときは必ず土地と建物が一体ですので土地と建物を共同担保で1つの抵当権にします。
登記簿謄本に共同担保としてどこの物件と一体になっているかがわかるように記載されていますが、普通に登記簿謄本を取得するだけでは書いていないこともあります。謄本取得の際に共同担保目録の有無の選択があり、共同担保目録ありにしないと記載されません。
共同担保目録をみると他にも不動産を所有していることが判明することも多くあります。ここで他の不動産所有状況を確認できることもありますし、過去に売り買いをたくさんしてる方なんだなと読み取れたりもします。
■値下げできそうかの判断
登記簿謄本を読み取れるようになると、価格交渉も可能かどうかが判断できるようになります。
例えば差押。
これは税金を払っていない、返済期日通りに借入を返してないときなどに債権者が申し立てをして成立します。基本的に差押した人が所有権と同等の権利を持ち、所有者が勝手に売却できないようにする手段です。住宅ローンや税金などが多いです。
行政名義(市や都道府県)などの差押であれば主に地方税なので、住民税、固都税などが該当します。
財務省名義の場合は主に国税なので所得税、法人税、相続税などがあげられます。これらは税金なので逃げようがありません。納付期日があるので逼迫していることが多いです。つまり交渉はしやすいということになります。ただし払えるのに払っていない場合などもありますので全部が全部というわけではありません。
私の経験では財務省の抵当権で8億円という差押がありました。差押と解除を繰り返している方でしたが、都心の地主で相続税の分割支払いだったかで抵当権を付けたとのこと。抵当権が全くついていない不動産をたくさんもってましたから、ただのだらしのない人だったんだと思います(笑)
また、個人名義で借入をしているものも値下げの可能性はあります。というのも友達にお金を貸したら1~3年くらいで返してほしいですよね? 私だったら1年くらいで返してほしいです(笑)
■注意事項
値下げ交渉はあくまで交渉です。差押がついていても、競売の方が気が楽だから値下げには応じないという人もたくさんいます。たまに上から目線で買ってやるからとか、独自の理屈つけて●●円しか出しませんという話をしてくる方いますが、私が仲介だったらお断りします。
理屈がわからないわけではなく、単純にそういう方には値下げしてまで売りたくないというのが本音です。足元を見た交渉は往々にしてうまくいくことはありません。値下げ交渉も相手の気持ちを理解しながら進めていかないと、自分の思うように進むことはないと思います。
しっかりと謄本を読み解いて相手の気持ちを理解した交渉を進めていただければと思います。