テレビ画面越しで見るぶんには最高に気持ちよさそうな季節、「夏」がやってきました。
まごうことなき「夏」です。
青々した緑、照りつける太陽、輝く水面、弾ける炭酸、喉を流れるアイスの感触、ふたりで歩いた畦道、視界をふさぐ花火の大輪、耳まで届かなかった君の声――、
そのすべてがまやかしです。
嘘もしくは演出です。
実際にそのなかに立ってみれば、あまりの暑さにめまいを覚え体中べとべと、夜なのに呼吸をしているだけで額から汗の滴る季節にいて気持ちのいいわけがありません。
洗濯物が乾きやすいという現実的な一点を除いて、夏のメリットなど――少なくともわたしにとっては――なにもないのです。
たまにお盆の予定を聞いてくる人がいますけど、「実家に帰る」と「ビールを飲む」以外になにかあるんですか?
世間の人たちにはその他の予定とかあるんですか?
えっ、えっ?