わたし岸田文雄第100代内閣総理大臣を見たことがあるんです。神田を歩いていてなんか物々しいなと思ったら、目の前の床屋から岸田文雄第100代内閣総理大臣が出てきたんです。内閣総理大臣と言えば日本国行政のトップですよ。我が国の運営を任される主宰者ですよ。凄くないですか? もの凄くないですか? この大国日本を動かす、あの、岸田文雄第100代内閣総理大臣が、わたしの目の前に現れたんです。岸田文雄第100代内閣総理大臣の網膜にもわたしが映りましたし、わたしの姿形を構成する情報が網膜からニューロンを駆け巡り、歴史に名を残し教科書にも載る人物の記憶ディスクに焼き付けられたんです。人類は二種類に分けられる。岸田文雄第100代内閣総理大臣に見られたことがある人間か、もしくは見られたことがない人間か――。これからわたしは日本国内閣総理大臣の記憶野に存在する女として過ごさねばならないし、そう振る舞っていこうと思いますの。
では。